
「遺言書があるから、相続でもめないと思っていた」
しかし、実際には、自筆証書遺言が原因で相続人同士のトラブルになるケースは少なくありません。
本記事では、自筆証書遺言で揉めやすい代表的なケースや、注意したいポイントについて司法書士が解説します。
自筆証書遺言で揉めやすいケースとは?
自筆証書遺言で揉めやすい主な原因
特に、
- 内容が曖昧になっている
- 不動産の記載が不正確
- 一部の相続人に偏った内容
- 形式不備がある
- 複数の遺言書が見つかる
このようなケースでは、相続手続きが止まったり、相続人同士で争いになることがあります。
また、自筆証書遺言は、公正証書遺言とは異なり、自宅で保管されているケースも多いため、検認や相続人調査が必要になることもあります。
書き方の不備で無効になるケースがあります
自筆証書遺言は、自分で手書きして作成できる遺言書ですが、法律で定められた形式を満たしていない場合には、無効になることがあります。
そのため、「遺言書を書いていたから安心」とは限らず、相続開始後にトラブルになるケースも少なくありません。
よくある形式不備の例
- 日付が正確に書かれていない
- 署名がない
- 押印が漏れている
- 全文が自筆になっていない
- 内容を書き換えた修正方法が適切でない
例えば、「令和◯年◯月吉日」など、日付が特定できない記載では、無効になる可能性があります。
また、パソコンで作成した本文に署名だけしているケースなども、内容によっては問題になることがあります。
さらに、不動産の記載を後から修正したものの、法律上必要な訂正方法を満たしておらず、どこまでが有効なのか争いになるケースもあります。
自筆証書遺言は自由に作成できる反面、形式不備によって相続手続きが止まったり、相続人間で争いになるリスクがあるため注意が必要です。
特に、不動産が含まれている場合には、記載内容や形式不備によって相続登記が進められないケースもあります。
内容が曖昧で解釈が分かれることがあります
自筆証書遺言では、記載内容が曖昧だったために、相続人同士で解釈が分かれてしまうケースがあります。
特に、自分で自由に作成できる反面、法律用語や不動産表示が不正確になっているケースも少なくありません。
揉めやすい曖昧表現の例
- 「家は長男に任せる」
- 「預金はみんなで仲良く分ける」
- 「面倒を見てくれた人へ多く渡す」
- 「財産を託す」など意味が不明確
- 不動産の所在地表示が不完全
例えば、「家を任せる」という表現が、「所有権を相続させる」という意味なのか、「管理をお願いする」という意味なのかで争いになるケースがあります。
また、「預金をみんなで分ける」と書かれていても、具体的な割合や対象口座が不明確な場合には、相続人間で認識が分かれることがあります。
不動産についても、「○○の土地」など曖昧な記載だけでは、どの不動産を指しているのか特定できず、相続登記が進められないケースがあります。
特に、自宅以外にも土地や不動産を所有している場合には、登記事項証明書どおりに正確な表示を記載しておくことが重要です。
遺言書は、書いた本人にとっては意味が明確でも、相続人側では解釈が分かれることがあります。
そのため、自筆証書遺言では、「誰に」「どの財産を」「どのように相続させるのか」を具体的に記載することが重要です。
一部の相続人に偏った内容でトラブルになることがあります
自筆証書遺言では、「特定の相続人へ多く財産を渡したい」という内容が記載されるケースも少なくありません。
しかし、内容によっては、相続人間で不公平感が生じ、トラブルにつながることがあります。
揉めやすいケースの例
- 長男へ全財産を相続させる内容
- 特定の子どもだけ優遇している
- 配偶者へ何も残していない
- 介護した相続人へ偏った配分
- 理由説明がなく不満が生じる
例えば、「長男へ全ての不動産を相続させる」とだけ記載されている場合、他の相続人との間で不公平感が強くなるケースがあります。
また、「介護してくれたから多く渡したい」という意図があっても、その理由が遺言書内で十分説明されていないことで、他の相続人が納得できず、争いになることもあります。
特に、不動産は分けにくい財産のため、一人へ集中して相続させる内容では、後からトラブルになるケースも少なくありません。
なお、兄弟姉妹以外の相続人には、「遺留分」という最低限の取り分が認められている場合があります。
そのため、遺言内容によっては、後から「遺留分侵害額請求」が行われるケースもあります。
自筆証書遺言では、単に財産配分を書くのではなく、「なぜその内容にしたのか」を付言事項などで補足することで、相続人間のトラブル予防につながる場合があります。
不動産の記載不備で相続手続きが止まることがあります
不動産は「住所」ではなく登記情報で特定します
「自宅の土地建物」
登記事項証明書に基づく表示
不動産の特定が不十分だと、相続登記が進められないことがあります
自筆証書遺言では、不動産の記載内容が不正確だったために、相続登記などの手続きが進められなくなるケースがあります。
特に、不動産は「住所」ではなく、「登記情報」に基づいて特定する必要があるため注意が必要です。
よくある記載不備の例
- 住所だけを書いている
- 地番や家屋番号が誤っている
- 複数不動産の区別が曖昧
- 土地だけ・建物だけの記載漏れ
- 古い住所表示のままになっている
例えば、「○○市の実家を長男へ相続させる」とだけ記載されている場合、対象不動産を正確に特定できず、法務局で相続登記が止まるケースがあります。
また、土地と建物で登記情報が分かれているにもかかわらず、片方しか記載されていないケースも少なくありません。
特に、複数の土地を所有している場合や、私道持分・共有持分がある場合には、記載漏れによって後から追加手続きが必要になることがあります。
不動産の表示は、固定資産税の通知書ではなく、登記事項証明書どおりに正確に記載することが重要です。
相続登記では、遺言書の内容に基づいて法務局で手続きを行うため、不動産表示が不明確な場合には、補足資料や相続人間の追加協議が必要になるケースもあります。
そのため、自筆証書遺言で不動産について記載する場合には、事前に登記情報を確認しておくことが重要です。
遺言書が複数見つかって揉めるケースもあります
相続開始後に、自筆証書遺言が複数見つかるケースもあります。
この場合、「どの遺言書が有効なのか」で相続人同士のトラブルになることがあります。
よくあるケースの例
- 古い遺言書と新しい遺言書が見つかった
- 内容が異なる遺言書が複数ある
- 一部だけ修正された遺言書がある
- 下書きのようなメモが見つかった
- 法務局保管と自宅保管の両方が存在する
例えば、古い遺言書では「長男へ相続させる」と書かれていたものの、新しい遺言書では別の内容になっていた場合、どちらを基準にするのか問題になることがあります。
一般的には、法律上有効な方式で作成された「新しい日付の遺言書」が優先されます。
ただし、日付が不明確だったり、一部だけ内容が変更されている場合には、解釈をめぐって争いになるケースもあります。
また、自宅からメモのような書類が見つかり、「これも遺言ではないか」と主張されるケースもあります。
特に、自筆証書遺言は自由に作成できるため、複数作成されていることに相続人が気づいていない場合も少なくありません。
遺言書が複数見つかった場合には、作成日付や内容、形式面などを整理しながら、どの遺言書が有効なのか慎重に確認する必要があります。
また、自宅保管の自筆証書遺言については、検認手続きが必要になるケースもあるため注意が必要です。
自筆証書遺言のトラブルを防ぐには?
自筆証書遺言のトラブル予防の流れ
財産を整理する
不動産は登記情報を確認
誰に何を相続させるか明確に記載
日付・署名・押印を確認
法務局保管制度・公正証書遺言も検討
自筆証書遺言は、自分で作成できる一方で、形式不備や内容の曖昧さによって、相続トラブルにつながるケースもあります。
そのため、「遺言書を書けば安心」ではなく、後から手続きで困らない内容になっているかを意識することが重要です。
トラブル予防のポイント
- 不動産は登記情報どおり正確に記載する
- 誰に何を相続させるか明確に書く
- 日付・署名・押印など形式を確認する
- 付言事項で理由や想いを補足する
- 法務局保管制度や公正証書遺言も検討する
特に、不動産については、「実家」などの曖昧な表現ではなく、登記事項証明書どおりに正確に記載することが重要です。
また、「家族ならわかるだろう」という前提で内容を省略すると、後から相続人同士で解釈が分かれるケースもあります。
さらに、一部の相続人へ多く財産を渡したい場合には、その理由を付言事項として残しておくことで、相続人間の不公平感を和らげられる場合があります。
法務局の自筆証書遺言保管制度を利用することで、紛失や改ざんリスクを減らせるケースもあります。
また、公正証書遺言であれば、公証人が内容や形式を確認したうえで作成するため、形式不備による無効リスクを抑えやすくなります。
自筆証書遺言は、「作ること」だけでなく、「相続開始後に実際に使える内容になっているか」が重要です。
そのため、不動産相続や相続人関係が複雑な場合には、事前に専門家へ相談しながら整理することをおすすめします。
このような場合は早めの相談をおすすめします
自筆証書遺言は、自分で作成できる反面、形式不備や内容の曖昧さによって、相続人間のトラブルにつながるケースがあります。
また、不動産相続や相続人関係が複雑な場合には、相続登記や遺産分割協議が進めにくくなることもあります。
特に、次のような場合には、早めに状況を整理しておくことをおすすめします。
- 自筆証書遺言を書いている
- 形式が正しいかわからない
- 不動産の記載方法に不安がある
- 相続人同士の関係が複雑
- 一部の相続人へ多く財産を渡したい
- 兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる
- 遺言書が複数存在している
- 法務局保管制度を利用するか迷っている
- 公正証書遺言にした方がよいか悩んでいる
- 相続開始後にもめないか不安
特に、不動産が含まれている場合には、遺言書の記載内容によって、相続登記が進められないケースもあります。
また、相続人が多い場合や、兄弟姉妹・甥・姪が相続人になるケースでは、相続開始後の調整が複雑になることがあります。
M2K司法書士事務所では、自筆証書遺言の内容確認や、不動産相続を見据えた遺言作成、相続登記についてご相談を承っております。
「この書き方で大丈夫かわからない」
「相続でもめない内容にしたい」
そのような段階でも構いませんので、お気軽にご相談ください。
よくあるご質問
あります。
内容が曖昧だったり、不動産の記載が不正確だったり、一部の相続人に偏った内容になっている場合には、相続人間でトラブルになるケースがあります。
法律上必要な形式を満たしていない場合には、無効になる可能性があります。
日付・署名・押印の漏れや、修正方法の誤りなどによって問題になるケースもあります。
不動産は、「実家」などの曖昧な表現ではなく、登記事項証明書どおりに正確に記載することが重要です。
地番や家屋番号の記載漏れによって、相続登記が進められないケースもあります。
自筆証書遺言は自分で作成する遺言書で、公正証書遺言は公証人が関与して作成する遺言書です。
公正証書遺言は形式不備による無効リスクを抑えやすく、原則として家庭裁判所での検認も不要です。
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