
「母が認知症になってしまい、遺産分割の話が進められない」
「相続人の一人に判断能力の低下がある場合、相続手続きはどうなるの?」
このようなご相談は、近年特に増えています。
相続手続きでは、遺産分割協議を行うために、原則として相続人全員が内容を理解し、自分の意思で合意できる状態であることが必要です。
そのため、認知症などにより判断能力が不十分な相続人がいる場合には、通常の遺産分割ができないケースがあります。
本記事では、相続人に認知症の方がいる場合の遺産分割や、成年後見制度との関係について司法書士が解説します。
遺産分割協議は相続人全員の合意が必要です
遺産分割協議は「相続人全員」の合意が必要です
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相続人A
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相続人B
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相続人C
全員が内容を理解し、自分の意思で合意することが必要です
相続が発生した場合、誰がどの財産を取得するのかを話し合う手続きを「遺産分割協議」といいます。
預貯金や不動産などを相続人同士で分ける場合には、原則として相続人全員の合意が必要になります。
一部の相続人だけで決めることはできません
例えば、
- 長男が実家を相続する
- 預貯金は配偶者が取得する
- 不動産を売却して代金を分ける
このような内容を決める場合でも、原則として相続人全員が内容を理解し、合意している必要があります。
そのため、一部の相続人だけで遺産分割協議を進めたり、署名押印を行ったりしても、有効な遺産分割協議にならない可能性があります。
相続登記や不動産売却にも影響します
不動産の相続登記を行う場合にも、遺産分割協議書が必要になるケースがあります。
しかし、相続人の中に判断能力が不十分な方がいる場合には、通常の遺産分割協議を進められないことがあります。
特に、不動産売却を予定しているケースでは、相続登記や契約手続きが進められず、後から問題になることもあります。
まずは相続人全員の状況確認が重要です
相続手続きを進める際には、
- 相続人が誰になるのか
- 現在の判断能力に問題がないか
- 遺言書の有無
などを整理しながら進めることが大切です。
認知症などで判断能力が不十分な場合は注意が必要です
判断能力に不安がある場合のイメージ
🧓
相続人の一人
認知症などで判断能力に不安
⚠️
通常の遺産分割が難しい場合
後から有効性が問題になることも
遺産分割協議を行うためには、相続人それぞれが、協議内容を理解し、自分の意思で判断できる状態であることが必要です。
そのため、認知症などにより判断能力が不十分な場合には、通常の遺産分割協議を進めることができないケースがあります。
「物忘れがある」だけで直ちに無効になるわけではありません
高齢になると、多少の物忘れが見られることは珍しくありません。
そのため、単に高齢であることや、軽度の物忘れがあるだけで、直ちに遺産分割協議ができなくなるわけではありません。
問題になるのは、
- 遺産分割の内容を理解できない
- 自分の財産について判断できない
- 意思表示が適切にできない
など、法律上必要な判断能力が不十分な場合です。
後から遺産分割協議の有効性が問題になることもあります
認知症が進行しているにもかかわらず遺産分割協議を行った場合、後から「遺産分割協議は無効ではないか」と争いになるケースがあります。
特に、不動産の相続登記や売却が関係する場合には、慎重な対応が必要です。
金融機関や法務局で手続きが止まることもあります
相続手続きでは、金融機関や法務局から本人確認や意思確認を求められることがあります。
その際、判断能力に問題があると判断された場合には、手続きが進められないケースもあります。
そのため、相続人の中に認知症などで判断能力に不安のある方がいる場合には、早めに状況を整理し、必要な対応を検討することが重要です。
成年後見人の選任が必要になることがあります
成年後見人が選任される場合の流れ
🧓
本人
判断能力に不安
🏛️
家庭裁判所
後見人を選任
👨⚖️
成年後見人
本人の利益を守る
家族が当然に代理できるわけではありません
相続人の中に、認知症などにより判断能力が不十分な方がいる場合には、家庭裁判所で成年後見人を選任する必要が生じることがあります。
成年後見人とは、判断能力が不十分な方に代わって、法律行為や財産管理を行う人です。
成年後見人が選任されると、本人に代わって遺産分割協議を行います
遺産分割協議では、相続人全員が有効に意思表示できる必要があります。
そのため、本人が遺産分割の内容を理解し、適切に判断することが難しい場合には、成年後見人が本人に代わって協議へ参加することになります。
なお、成年後見人は本人の利益を守る立場で手続きを行うため、他の相続人の希望だけで自由に遺産分割を進められるわけではありません。
場合によっては、法定相続分を踏まえた内容が求められることもあります。
例えば、
- 認知症が進行している
- 意思疎通が難しい
- 財産内容を理解できない
などの場合には、成年後見制度の利用を検討することがあります。
家族が自動的に成年後見人になるわけではありません
成年後見人は、家庭裁判所が選任します。
そのため、子どもや配偶者が当然に代理人になれるわけではありません。
ケースによっては、親族ではなく、弁護士や司法書士などの専門職が成年後見人に選任されることもあります。
成年後見制度を利用すると継続的な管理が必要になることがあります
成年後見制度は、遺産分割だけのために一時的に使う制度ではありません。
原則として、本人が亡くなるまで後見が継続するため、定期的な報告などが必要になるケースがあります。
そのため、相続手続きの状況や財産内容を踏まえながら、適切な対応を検討することが重要です。
家族だから代わりに署名できるわけではありません
相続手続きでは、
「母は認知症だから、長男である自分が代わりに署名すればよいのでは?」
と考えられることがあります。
しかし、家族であっても、本人に代わって自由に遺産分割協議書へ署名押印できるわけではありません。
遺産分割協議は本人の意思に基づいて行う必要があります
遺産分割協議は、相続人それぞれの財産に関する重要な手続きです。
そのため、原則として本人が内容を理解し、自分の意思で合意する必要があります。
認知症などにより判断能力が不十分な場合には、本人だけで有効な意思表示を行うことが難しいケースがあります。
無断で署名すると後から問題になることがあります
本人に代わって家族が署名した場合、後から遺産分割協議の有効性が問題になる可能性があります。
特に、不動産の相続登記や売却が関係する場合には、金融機関や法務局で手続きが止まるケースもあります。
成年後見制度の利用を検討することがあります
相続人に判断能力の不十分な方がいる場合には、成年後見人の選任が必要になるケースがあります。
成年後見人は、本人の利益を守る立場で、本人に代わって遺産分割協議へ参加します。
そのため、「家族だから自由に代わりができる」というわけではなく、法律上の手続きに沿って進めることが重要です。
不動産売却や相続登記が進められないケースもあります
相続人の中に認知症などで判断能力が不十分な方がいる場合、不動産の相続登記や売却手続きが進められなくなるケースがあります。
遺産分割協議ができないと相続登記が進められないことがあります
不動産を相続人の一人が取得する場合には、遺産分割協議書を作成して相続登記を行うケースがあります。
しかし、相続人全員による有効な遺産分割協議ができなければ、相続登記を進められない場合があります。
特に、
- 実家を売却したい
- 空き家を整理したい
- 相続した不動産の名義を変更したい
といった場面で、手続きが止まってしまうことがあります。
不動産売却にも影響します
不動産を売却するためには、通常、現在の所有者名義へ相続登記を行う必要があります。
そのため、認知症などにより遺産分割協議が進められない場合には、売却手続き自体が進まなくなるケースもあります。
実際には、売却相談をきっかけに、初めて成年後見制度の検討が必要になることも少なくありません。
特に、長年そのままになっている実家や空き家では、相続登記と成年後見の問題が同時に生じるケースもあります。
相続人全員の状況確認が重要です
相続手続きを進める際には、
- 相続人が誰になるのか
- 判断能力に問題がないか
- 不動産の名義がどうなっているか
- 売却予定があるか
などを整理しながら進めることが重要です。
特に不動産が関係する相続では、後から手続きが止まらないよう、早めに状況を確認しておくことをおすすめします。
このような場合は早めの相談をおすすめします
相続人の中に認知症などで判断能力に不安のある方がいる場合、相続手続きが通常どおり進められないケースがあります。
特に、次のような場合には、早めに状況を整理しておくことをおすすめします。
- 相続人の中に認知症の方がいる
- 遺産分割協議が進まない
- 実家や空き家を売却したい
- 相続登記を進めたいが手続きが止まっている
- 相続人同士で話し合いがまとまらない
- 成年後見制度を利用するべきか迷っている
- 家族が代わりに手続きできると思っていた
- 金融機関や不動産会社から成年後見について説明を受けた
認知症が関係する相続では、成年後見制度の利用が必要になるケースもあり、通常の相続よりも手続きに時間がかかることがあります。
また、不動産売却や相続登記を予定している場合には、早めに対応を検討しておくことが重要です。
M2K司法書士事務所では、相続登記だけでなく、成年後見制度や不動産相続に関するご相談にも対応しております。
「何から確認すればよいかわからない」
そのような段階でも構いませんので、お気軽にご相談ください。
よくあるご質問
判断能力の程度によります。
遺産分割協議は、相続人全員が内容を理解し、自分の意思で合意する必要があります。
認知症などにより判断能力が不十分な場合には、通常の遺産分割協議ができず、成年後見人の選任が必要になることがあります。
家族であっても、本人に代わって自由に署名押印できるわけではありません。
無断で署名した場合、後から遺産分割協議の有効性が問題になる可能性があります。
判断能力に不安がある場合には、法律上の手続きに沿って進めることが重要です。
必ず必要になるとは限りません。
本人の判断能力の程度や、遺言書の有無、相続財産の内容によって対応は異なります。
ただし、本人が遺産分割の内容を理解して判断することが難しい場合には、成年後見人の選任が必要になることがあります。
すぐに売却できないケースがあります。
不動産を売却するためには、相続登記や売買契約などの手続きが必要になります。
相続人の中に判断能力が不十分な方がいる場合には、成年後見制度の利用などを検討する必要があります。
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