はじめに

遺言は、正しい方式で作成することで、相続人の混乱や争いを防ぎ、安心して未来を託すことができます。
ここでは、一般的に利用される「普通方式の遺言」3種類について、違いや特徴をわかりやすくご紹介します。

🔍 このページの目次

🔍 遺言の種類(普通方式)

普通方式の遺言には、以下の3つがあります:

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

それぞれにメリット・注意点があり、目的や状況に応じて選ぶことが大切です。

📊 比較表:費用・関与・検認・保管方法

遺言方式費用他者の関与検認の必要性保管方法
自筆証書遺言無料
(自作)
不要
(本人のみ)
必要
(※保管制度利用時は不要)
自宅・法務局(保管制度あり)
公正証書遺言有料
(数万円〜)
公証人+証人2名不要公証役場に原本保管
秘密証書遺言有料
(公証人手数料)
公証人+証人2名
(内容は秘密)
必要自宅など
(本人管理)

📘 各遺言方式の詳細

🖋️ 自筆証書遺言とは

本人が全文を手書きし、日付・署名・押印を行う方式の遺言です。
費用をかけずに作成できる一方で、形式不備や保管方法には注意が必要です。

✅ 作成の要件

  • ✍️ 全文手書き
  • 📅 日付手書き
  • 🧑‍💼 氏名手書き
  • 🖊️ 押印
    ※実印である必要はありませんが、本人確認や信頼性の観点から実印の使用を推奨しています。

💻 財産目録の作成について

  • 財産目録はパソコンやExcel等で作成可能になりました。
  • ただし、すべてのページに自筆署名と押印が必要です。
  • 押印は、遺言本文と同じ印鑑を使用することが強く推奨されます。
    →改ざん防止・本人作成の証明のためです。

🌟 メリット

  • 💰 費用がかからない
  • 🕒 一人でいつでも作成できる

⚠️ デメリット

  • 🏛️ 家庭裁判所での検認が必須
  • 📄 形式不備で無効になる可能性
  • 🗂️ 保管場所が不明だと存在しないものとされる危険
  • 🕵️‍♂️ 盗難・破棄・改ざんのリスク

🏢 法務局の保管制度でリスク回避

法務局に遺言書を保管することで、以下のメリットがあります:

  • 検認が不要
  • 🔍 保管場所の検索が可能
  • 🔐 紛失・改ざんのリスクが大幅に減少

💰 保管制度の費用一覧(2025年現在)

手続き内容手数料(税込)備考
遺言書の保管申請3,900円1通につき
モニター閲覧(画面で確認)1,400円相続人等が申請可能
原本閲覧(現物確認)1,700円同上
遺言書情報証明書の交付1,400円銀行・登記申請時に使用可能
保管事実証明書の交付800円保管されていることの証明

📎 詳細は法務局の「自筆証書遺言書保管制度」のページをご確認ください。

🏛️公正証書遺言とは

🏛️ 公正証書遺言とは

公証人が関与して作成する、法的に最も確実性の高い遺言書です。
遺言者が口述し、公証人が筆記・確認・作成するため、形式不備や紛失のリスクがほぼありません。

✅ 作成の要件

  • 👤 遺言者が公証人役場に出向く(または出張依頼)
  • 🗣️ 遺言者が口述し、公証人が筆記
  • 👀 証人2名の立会いが必要
  • 📄 公証人が原本を保管し、正本・謄本を交付

🌟 メリット

  • 🛡️ 検認が不要
  • 📑 形式不備の心配がほぼない
  • 🔐 原本は公証役場に保管されるため、紛失・改ざんのリスクが低い
  • 🏦 銀行・登記・相続手続きでの信頼性が高い

⚠️ デメリット

  • 💰 費用がかかる
  • 🧑‍🤝‍🧑 証人2名の確保が必要
  • 🏢 公証人役場へ出向く必要がある(出張も可能)

💰 公正証書遺言の費用目安(2025年現在)

財産の価額手数料(税込)
100万円以下5,000円
100万円超〜200万円以下7,000円
200万円超〜500万円以下11,000円
500万円超〜1,000万円以下17,000円
1,000万円超〜3,000万円以下23,000円
3,000万円超〜5,000万円以下29,000円
5,000万円超〜1億円以下43,000円
1億円超〜3億円以下43,000円+超過額5,000万円ごとに13,000円加算
3億円超〜10億円以下95,000円+超過額5,000万円ごとに11,000円加算
10億円超249,000円+超過額5,000万円ごとに8,000円加算

※証人報酬や出張費(距離に応じて)などが加算される場合があります。

※上記は遺言書の財産額に応じた基本手数料です。
※別途、証人報酬や出張費(距離に応じて)が加算される場合があります。

📎 詳細は公証役場の公式ページ
「Q7. 公正証書遺言の作成手数料はどれくらいですか?」をご参照ください。

🔒秘密証書遺言とは

遺言の内容を秘密にしたまま、公証人に「遺言書が存在すること」だけを証明してもらう方式です。
遺言書の本文は本人が作成し、封をした状態で公証人役場へ持参します。

✅ 作成の要件

  • ✍️ 遺言書は本人が作成(手書きでもパソコンでも可)
  • 📦 遺言書を封筒に入れて封印
  • 👤 遺言者が公証人役場に出向く
  • 👀 証人2名の立会いが必要
  • 📄 公証人が「遺言書が存在すること」を証明し、封印に署名押印

※遺言書の内容は公証人も証人も確認しません。

🌟 メリット

  • 🔐 遺言内容を誰にも知られずに作成できる
  • 📁 公証人が関与するため、存在の証明力がある
  • 🧾 パソコンで作成した遺言書も使える

⚠️ デメリット

  • 🏛️ 家庭裁判所での検認が必要
  • 📄 遺言書の内容に形式不備があると無効になる可能性
  • 🧑‍🤝‍🧑 証人2名の確保が必要
  • 📦 封印されたまま保管されるため、内容確認ができない

💰 費用の目安(2025年現在)

手続き内容手数料
秘密証書遺言の証明手続き11,000円
証人報酬(1人あたり)約5,000円~
出張費(希望する場合)距離に応じて加算

※財産額に関係なく、証明手続きの定額料金が基本です。

📎 詳細は公証役場の公式ページをご確認ください。

🗂️ 自筆証書遺言保管制度の手続きの流れ

法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用するには、以下の流れで手続きを行います。

📅 ① 事前予約が必要

  • インターネットまたは電話で、希望する法務局(遺言書保管所)に予約を取ります
  • 予約なしでは受付してもらえません

📄 ② 必要書類を準備

  • 📝 遺言書
    └ 封をせず、ホッチキス留めもせず、そのままの状態で提出
  • 🪪 本人確認書類
    └ 運転免許証・マイナンバーカードなど
  • 📑 保管申請書
    └ 法務省HPからダウンロード可能
  • 📬 通知対象者の情報(希望する場合のみ)

🏢 ③ 予約日に法務局へ出向いて手続き

  • 職員が形式要件を確認します(※内容は見ません)
  • 問題がなければ保管完了 → 「保管証」が交付されます

📌 注意ポイント

  • 代理人による申請や郵送は不可
    └ 必ず本人が出向く必要があります
  • ⚠️ 形式不備があると保管できません
    └ その場で返却されることもあります
  • 📦 封筒に入れたりホッチキスで留めるのはNG
    └ 必ずそのままの状態で提出してください

📎 詳細は法務局の「自筆証書遺言書保管制度」のページをご確認ください。

よくあるご質問(遺言関係)

Q. 自筆証書遺言と公正証書遺言の違いは?

自筆証書遺言は、全文を本人が手書きし、日付・署名・押印が必要です。費用はかかりませんが、形式不備や紛失・改ざんのリスクがあります。

公正証書遺言は、公証人が関与して作成され、原本が公証役場に保管されるため、安全性・確実性が高いです。証人2名が必要で、費用が発生します。

Q. 遺言書があれば、必ずその通りに相続されますか?

原則として遺言の内容が優先されますが、遺留分(一定の相続人に保障された最低限の取り分)を侵害している場合、遺留分侵害額請求が可能です。

また、遺言が無効と判断されるケース(認知症などによる意思能力欠如、形式不備など)もあるため、専門家の確認が重要です。

Q. 遺言書はいつでも書き直せますか?

はい、遺言は何度でも書き直すことができます。最新の日付の遺言が有効となります。

ただし、以前の遺言と矛盾する内容がある場合は、明確に「前の遺言を撤回する」旨を記載しておくと安心です。

Q. 遺言書に書ける内容は相続だけですか?

いいえ、相続以外にも「認知」「遺産分割方法の指定」「遺言執行者の指定」など、幅広い事項を記載できます。

ただし、法的効力を持たない希望(例:家族への感謝の言葉など)も自由に書くことができます。

Q. 付言とは何ですか?

付言(ふげん)とは、遺言書の中で法的効力を持たない「想い」や「メッセージ」を自由に記す部分です。

たとえば、家族への感謝の言葉、相続の意図、争いを避けてほしいという願いなどが含まれます。

付言があることで、遺言の背景や気持ちが伝わり、相続人の理解や納得につながることが多く、結果として“争族”の予防にも役立ちます。

法的な拘束力はありませんが、心のこもった付言は、遺言書を単なる手続きではなく「人生のメッセージ」として残すことができます。

Q. 検認って何ですか?

検認とは、家庭裁判所が遺言書の存在と内容を確認し、偽造や変造を防ぐための手続きです。

遺言の内容を審査するものではなく、形式的な確認にとどまります。

自筆証書遺言や秘密証書遺言には検認が必要ですが、公正証書遺言には不要です。

Q. 検認を受けたら遺言は有効になるのですか?

検認は遺言の有効性を判断する手続きではありません。

検認を受けたからといって、遺言が有効になるわけではなく、あくまで形式確認のためのものです。

遺言が法的に有効かどうかは、内容や作成時の状況(意思能力など)によって判断されます。