非営利一般社団法人は、設立後の運営が比較的自由である一方、
役員の任期管理や議事録の不備によって、思わぬトラブルが生じることも少なくありません。
ここでは、運営上特に注意しておきたいポイントを解説します。

役員の任期と変更登記
理事や監事には、法律または定款で定められた任期があります。
・理事: 2年
・監事: 4年(定款で2年まで短縮可能)
・会計監査人: 1年
選任後、上記以内に終了する事業年度の最終の定時社員総会終結時までが任期です。
※定時社員総会の開催時期によっては、任期が短くなることがあります。

任期満了により退任・重任する場合、つまり同じ人が引き続き同じ役員になる場合でも
社員総会による再任の決議が必要です。
また、重任する場合でも、変更登記申請が必要になります。
任期満了後の注意点
任期が満了しているにもかかわらず、
・役員変更登記を行っていない
・実質的に同じ役員で続けているが、登記を放置している
といった場合、登記懈怠となり、代表者個人に過料が課せられる可能性があります。
また、長期間にわたり登記が放置されている場合には、
法人の存続自体が問題となるケースもあります。
「メンバーは変わっていないから大丈夫」という認識は要注意です。
社員総会の決議要件
一般社団法人の社員総会の決議要件は、原則として次のとおりです。
| 普通決議 | 特別決議 | |
| 定足数 | 総社員の議決権の過半数を有する 社員が出席 | ー |
| 決議要件 | 出席した社員の議決権の過半数 | 総社員の頭数の半数以上 + 総社員の議決権の3分の2以上 |
| 定款による変更 | 定足数の緩和 決議要件を加重 | 決議要件の加重 |
普通決議
日常的な運営事項について行う決議です。
・理事、監事の選任
・計算書類の承認
・基金の返還
・清算人の選任
特別決議
次のような重要事項については、特別決議が必要となります。
・定款の変更
・社員の除名
・監事の解任
・解散
・事業譲渡
社員総会運営で注意すべきポイント
社員総会では、次の点が特に重要です。
・開催時期は適切か
・招集手続きが定款どおりに行われているか
・議事録が正確に作成されているか
定時社員総会は、1年に1回は開催する必要があります。
定時社員総会の招集手続きは、原則として1週間前までに通知する必要があります。
ただし、理事会非設置法人では、定款により招集期間を短縮することも可能です。
普通決議と特別決議が必要な事項については、
・定足数
・決議要件
を満たしている必要があります。
議事録については、勝手に作成されないように
・議長
・出席理事の署名又は記名押印(定款で規定)
が必要になります。
形式面の不備があると、
決議の有効性そのものが問題になることもあります。
理事会のない非営利一般社団法人では、
全ての事項を社員総会で決めることになります。
また、社員総会の招集決定については、理事会がないため、
理事の過半数で決定します。
代表理事の選定・解職
代表理事の変更は、法人運営に大きな影響を与えるため、
・適切な決議機関での決議
・正確な議事録の作成
が不可欠です。
代表理事の選定・解職は、
・理事会を設置している場合
・理事会を設置していない場合
で、代表理事の選定方法や登記に必要な書類が異なります。
また、代表理事だけではなく、理事もあわせて解任する場合には、社員総会が別途必要になります。
| 理事会あり | 理事会なし | |||
| 選定機関 | 理事会 | 出席:理事の過半数 賛成:出席理事の過半数 | 定款 | 特別決議 |
| 社員総会 | 普通決議 | |||
| 理事の互選 | 賛成:理事の過半数 | |||
| 解職機関 | 理事会 | 当該代表理事を除く 出席:理事の過半数 賛成:出席理事の過半数 | 社員総会 | 普通決議 |
| 理事の互選 | 当該代表理事を除く 賛成:理事の過半数 | |||
下記は、理事会を設置していない非営利一般社団法人の代表理事の変更登記に必要な書類の一覧です。
| 定款 | 社員総会 | 定款に基づく理事の互選 | ||
| 理事の就任承諾書 | 実印で押印 | 実印で押印 | 実印で押印 | |
| 代表理事の就任承諾書 | × | × | 認印でOK | |
| 代表理事の個人の印鑑証明書 | 〇 | 〇 | 〇 | |
| 理事選任の社員総会議事録 | 〇 | 〇 | 〇 | |
| 定款変更の社員総会議事録 | 〇 | × | × | |
| 議事録に実印の押印 | 議長 + 出席理事全員 | × | × | |
| 代表理事選定の社員総会議事録 | × | 〇 | × | |
| 議事録に実印の押印 | 議長 + 出席理事全員 | × | ||
| 定款 | × | × | 〇 | |
| 互選書 | × | × | 〇 | |
| 互選書に実印の押印 | 出席理事全員 | |||
議事録管理の重要性
よくあるトラブル例
運営上、最も多いトラブルは次のようなケースです。
・定款を紛失した
・定款を変更していない
・議事録が作成されていない
・議事録の内容が不十分で、決議内容が読み取れない
書類の備置義務
書類には、備置義務があります。
備置義務機関
・定款: 常に
・社員名簿: 常に
・社員総会議事録: 10年
・計算書類等: 5年
備置場所
・主たる事務所
重要書類については、日常的に適切に管理しておくことが重要です。
よくあるご質問
はい、必要です。
役員が再任される場合であっても、任期が満了した場合には、 役員変更(重任)登記を行う必要があります。
「人が変わっていないから大丈夫」と考えて登記をしないままにすると、 過料の対象となる可能性があります。
役員変更登記を長期間行わずに放置すると、 法務局から過料(罰金)の通知を受ける可能性があります。
また、金融機関での手続きや補助金申請、対外的な説明の場面で、 登記事項が最新でないことが問題になるケースもあります。
はい、社員総会の議事録は作成が必要です。
特に、役員の選任・解任や定款変更など、 登記に関係する決議については議事録が不可欠です。
議事録が作成されていない、または内容が不十分な場合、 登記申請が受理されないこともあります。
はい、法人の機関設計や定款の定めによって異なります。
理事会を設置している法人では理事会決議により選定されるのが一般的です。
一方、理事会を設置していない法人では、 社員総会で代表理事を選定する必要がある場合もあります。
状況によって対応方法は異なります。
事後的に整理が可能なケースもありますが、 内容によっては慎重な対応が必要になることもあります。
将来の登記やトラブル防止のためにも、 早めに専門家へ相談されることをおすすめします。
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