登記と解体の“すれ違い”に注意

🧱 増築部分が未登記のまま相続されたら

増築をしたにもかかわらず、登記がされていない建物を相続した場合、登記簿と実際の建物に不一致が生じている状態になります。

📜 法律上の義務

  • 不動産登記法第51条では、建物の表示登記は新築や増築があった日から1か月以内に申請することが義務付けられています。
  • 第164条では、正当な理由なくこの期間内に登記を怠った場合、10万円以下の過料が課される規定もあります。
    ※実際に過料が課されるケースはまれですが、法律違反であることには変わりありません。

📝 表題登記の変更が必要なケース

相続が発生し、建物の増築部分が登記されていない場合には、表題部の変更が必要です。
この手続きは土地家屋調査士の業務範囲であり、司法書士では対応できません。
早めに土地家屋調査士に相談し、増築部分を表題部に反映させたうえで、相続登記を行う流れになります。

🏗 解体予定の場合の対応

一方で、相続した建物をすぐに解体する予定がある場合には、
「費用をかけて登記する必要があるのか?」というご相談もあります。

この場合は、表題部の変更や相続登記を行わず、解体後に滅失登記を行うという選択肢もあります。
解体工事が完了すると、業者から「解体証明書」が発行されます。
その証明書をもとに、土地家屋調査士へ滅失登記を依頼します。

⚠ 注意点:解体業者と法務局への事前確認

一部の解体業者では、相続登記が未了の場合、工事を受け付けないケースがあります。
これは、登記名義人と依頼者との関係が不明瞭であることを理由としています。
※ただし、法務局や解体業者によって対応が異なる場合がありますので、事前確認をおすすめします。

また、固定資産税に増築部分が反映されている場合、納税通知書と登記簿の情報に不一致が生じ、
登記申請時に建物の同一性が認められず、申請が通らない可能性もあります。

💡 おすすめの対応

事前に、解体業者と登記申請予定の法務局へ確認をとることを強くおすすめします。
登記と実態の不一致は、相続や解体の場面で思わぬ障害になることがあります。